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犬のこと猫のこと 映画『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』公開記念インタビュー

Vol.3 タイトルを「犬と猫と人間と」の続編にしたわけ(全4回)

6月に公開となる映画「犬と猫と人間と2 動物たちの大震災」。
これまで断片的にしか取りあげられなかった被災地の人と動物に迫ったドキュメンタリー映画です。
本サイトで「犬のはなし」を連載中の穴澤賢さんをナビゲーターに迎え、前作の監督であり今作では構成・編集・プロデューサーをつとめた飯田基晴さんと、監督の宍戸大裕さんに話を伺いました。
3回目は、今作が「犬と猫と人間と」の続編になった理由をお聞きします。

写真左より、構成・編集・プロデューサーの飯田基晴さん、監督の宍戸大裕さん、穴澤賢さん

穴澤:取材は震災から600日にも及んだそうですね。

宍戸:最後の取材が2012年の11月ですから、最初に入ったときから1年8カ月になりました。

穴澤:飯田さんが、この映画のタイトルを「犬と猫と人間と」の続編にしようと思ったのは、いつ頃なのでしょうか。

飯田:震災から1年経ったとき、宍戸くんが撮り貯めた映像を70分にまとめました。それを観たときに力も感じ、これをきちんと仕上げて世の中に出すいい方法は何だろうと考えたんです。それまでは1人で取材してそれほどお金をかけずにやれましたが、やはり完成度を高めようとするとスタジオを借りて編集をしたり、音楽を入れたりしてお金がかかる。それを考えたときに一番いいのは、前作で応援してくれた人たちにもう1回応援してもらうことかなと。

穴澤:たしかに全然違うタイトルで世に出すのと、「犬と猫と人間と」の続編で出すのではずいぶん違ってくると思います。

飯田:それこそ穴澤さんも含めて応援して寄付してくださる方は大勢いて、大変感謝しています。

穴澤:たぶん、僕自身このタイトルでなければこれほど興味を持っていなかったかもしれないんです。というのは、前作は1人のお婆さん、稲葉さんの「不幸な犬猫を減らしたい」という寄付からスタートした点も含めてとてもいい映画だと思っています。そういう意味で、今回の映画も稲葉さんの意志を継ぐ映画だと思うんです。それを、飯田さん本人ではなく、弟子のような存在の宍戸さんが撮った映画のタイトルにすることに迷いはなかったのかなと

映画『犬と猫と人間と』公式サイトより
※編集室注:前作『犬と猫と人間と』については、公式サイトをご確認ください。

飯田:宍戸くんに提案するまで1カ月くらい悩みました。

穴澤:やっぱり。

飯田:ただこのタイトルにすると2012年7月に発表して、寄付が集まってくる中で「これはヘタものは作れないぞ」と相当なプレッシャーを感じていました。それから完成を迎える2013年1月までが一番しんどい日々だったと思います。

穴澤:ドキュメンタリーといっても、編集次第でいろいろな方向へ傾けられると思います。でも飯田さんの前作はそれがないというか、非常に中立的な感じがして好きなのですが、今回は編集で一番大変だったことは何でしょう。

飯田:最初から僕が主体でやるよという話ではなかったのですが、結果的には僕が主体になって編集することになったので、そのあたりでしょうか。自分で取材していれば、これくらいの取材をしたらからこの部分は十分だなとか、ある程度見立てができます。後半になるに従って取材は充実してくるのですが最初の頃の取材はまだまだ甘かったので、追加で取材に行ったりしていました。

穴澤:映画に出てくる「希望の牧場」での取材に飯田さんの声が入ってますもんね。

飯田:はい。あれは宍戸くんが牛に思い入れが強すぎたんですよ。牛を救うのが正しい、みたいな。彼も一緒になって牧場の一員のようにお手伝いとかしていましたから。その気持ちはわかるのですが、それだと映画にしたときについていけない人も出てきてしまう。だから引いた目線が必要だったので「本当に生かせなくなったときはどうするの?」という質問を僕がしました。

『犬と猫と人間と2』より

穴澤:たしかに牛のインパクトはありましたね。『犬と猫と人間と、牛』じゃないのかと思ったくらい。

宍戸:でも全体の割合からすると、それほど多くないんですよ。3分の1くらいですね。

穴澤:1度試写会で観ましたが、今日お話を聞くためにDVDをお借りしてもう一度観ました。2回目に観ると、牛の比率って思っていたほど高くないんですよね。でも最初に観たときは、牛がすごく印象に残りました。なぜだろう。

飯田:それだけ取材が充実していて、インパクトがあるからじゃないですかね。そういえば穴澤さん、ブログで映画の感想を「まとまりがない」って書いていたじゃないですか。

穴澤:書きました。素直にそう思ったので。

飯田:僕の中では前作と同じようにまとめたというか、編集したつもりなのですが……。

穴澤:でも悪い意味ではないですよ。あれだけのことが起きて、あれだけの人がさまざまなことで苦しんでいる状況を、100分やそこらでまとめられるわけがないじゃないですか。

飯田:たしかにそうです。

穴澤:僕はああいうことが起こったときに、たとえばひとつの家族の出会いと別れだけを取り上げて、無理矢理心温まるストーリーを作りたがるワイドショー的な手法が大嫌いなんです。そういう意味で、この映画は変にこじんまりまとめようとしていないところが逆にいいなと。

飯田:前作は概ね好評なんです。でも今回の映画は、人によってパート1とずいぶん違うと言われることがあって、同じようにやったつもりなのにどこが違うのか自分でもまだ考えている途中なので、穴澤さんの意見を教えてもらいたいのですが。

穴澤:前作は震災はなかったじゃないですか。あくまでも人間はわりと幸せに暮らしている社会の影で、実は不幸な犬や猫がいるんだよっていう。

飯田:そうですね。知られざる現場の日常ですからね。

『犬と猫と人間と2』より

穴澤:ところが今回は、人間も滅茶苦茶になって生活が成り立たなくなったところの動物の話なんです。根底が違うわけですよ。そこでは必ず線引きのようなものが出てくると思うんです。

飯田:線引き?

穴澤:犬は避難所に入れないとか。人間と動物の間のどこかにラインができると思うんです。もちろん人によってそれぞれで「何があっても離れない」という人もいれば、どこかで諦める人もいる。どっちが良い悪いではなく、やはり社会は人間中心に回っているために、どこかで必ずそういう問題が起こってくると思うんです。もちろん家畜も。今回の映画では、そういうことをすごく考えさせられました。だから映画の本質は同じだけど、前作と今作では、状況がまったく違うということじゃないでしょうか。

『犬と猫と人間と2』より

vol.4に続く

次回予告

「犬と猫と人間と」の続編としての公開を決めたのは多くの人に知ってもらいたい、観てもらいたいという飯田プロデューサーの強い思いがありました。
最終回となる次回は、宍戸監督と飯田プロデューサーが映画で伝えたかったこと、これからのことについてお聞きします。

作品情報

『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災 』

大津波に襲われた宮城県石巻市。原発事故に翻弄されつづける福島県。東日本大震災では犬や猫、牛などの動物たちも被災しました。動物たちが伝える無言の声、その声に耳を澄まし動きだす人々。別れ、再びめぐり逢ういのちといのち。動物たちと人々が過ごした3・11からの600日を見つめます。 2009年に劇場公開され話題を巻き起こしたドキュメンタリー映画「犬と猫と人間と」の飯田基晴監督がプロデューサーとして製作を指揮、宮城県出身の若手監督宍戸大裕が震災下を生きぬく動物たちと人々に迫ります。
監督・撮影:宍戸大裕
構成・編集・プロデューサー:飯田基晴
製作:映像グループ ローポジション
 

2013年6月1日(土)より渋谷ユーロスペースほか、全国順次公開決定
公式サイト http://inunekoningen2.com/

作者プロフィール

宍戸 大裕(ししど だいすけ)

1982年、宮城県仙台市生まれ。宮城県名取市在住。 学生時代、本作のプロデューサーでもある映像作家の飯田基晴氏や土屋トカチ氏(『フツーの仕事がしたい』監督)が主催する映像サークル「風の集い」に参加し、映像製作を学ぶ。 学生時代の作品に、高尾山(東京)へのトンネル開発計画と、それに反対する住民による自然保護運動の姿を追ったドキュメンタリー作品『高尾山二十四年目の記憶』がある。福祉関係のNPO勤務を経て、現在は映像製作に携わる。

飯田 基晴(いいだ もとはる)

1973年神奈川県横浜市生まれ。 96年より新宿でボランティアとして野宿の人々と関わり、98年よりビデオ、テレビ等で野宿者の状況を発表。フリーで映像製作を行う。2006年、仲間と「映像グループ ローポジション」を設立。監督作品として、『あしがらさん』(02年)、『今日も焙煎日和』(07年)、『犬と猫と人間と』(09年)、「逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者」(12年)。2010年、初の著書「犬と猫と人間と いのちをめぐる旅」を出版、さらに『犬と猫と人間と』のダイジェスト版DVD『いぬとねことにんげんと』(11年)などを製作。本作では構成・編集・プロデュースを務める。

穴澤賢(あなざわまさる)

1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に「ひとりと一匹」(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック「Another Side Of Music」(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った「またね、富士丸。」(世界文化社)などがある。2012年には、実話をもとにした猫の絵本「明日もいっしょにおきようね」(草思社)を手がける。酒好き。
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