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6月に公開となる映画「犬と猫と人間と2 動物たちの大震災」。
これまで断片的にしか取りあげられなかった被災地の人と動物に迫ったドキュメンタリー映画です。
本サイトで「犬のはなし」を連載中の穴澤賢さんをナビゲーターに迎え、前作の監督であり今作では構成・編集・プロデューサーをつとめた飯田基晴さんと、監督の宍戸大裕さんに話を伺いました。
最終回となる4回目は、作品に込めた想いについてお聞きします。
穴澤:月並みな質問なのですが、宍戸さんが監督としてこの映画で一番伝えたかったことはなんでしょうか?
宍戸:宮城でも福島でも、被災地へ行くと感じるのですが、震災から2年が経っても、当時の悲しみなどが積み重なりながら続いているんですね。続いているということに目を向けてほしかったんです。
穴澤:そうなんですよね。別に忘れたわけじゃないですけど、忘れたような雰囲気はありますよね。メディアもずっと放送するわけにもいかないから、報道をしないこともわかる部分もあるのですが。福島の原発も落ち着いたみたいな雰囲気になってますけど、全然落ち着いてないですからね。
飯田:たしかに、動物たちの悲惨な姿などは、テレビのニュースでボンと出すものではないのかもしれませんが、タブーにするのもどうかと思うんです。そういう意味ではやっぱり僕らみたいなインディペンデントの役割はあるだろうと思っています。
穴澤:たしか震災が起きた2011年の12月頃だったと思うのですが、原発20キロ圏内に餌やりボランティアで通っているカメラマンに同行させてもらったことがあるんですよ。
宍戸:20キロ圏内に入ったんですか?
穴澤:入りましたよ。地元住民の方にご協力をいただいて入りました。ゴーストタウンのような雰囲気の中、ダチョウが普通に歩いていたりして。そのときに感じたのは、20キロ圏内の立ち入りが禁止されて、そこにはまだたくさんの動物が取り残されていて、それが大問題にならないなんて、この国は絶対どうかしているということでしたね。なんだか凄く腹が立ったのを覚えています。現地でもそういう憤りみたないものは感じたと思うのですが。
宍戸:多くの人に出会って「怒りを感じませんか?」と聞いたこともあります。でも、そう聞くと「怒りというより悲しい」という人が多かったです。
穴澤:怒る気力もないという感じですか。
宍戸:そうかもしれないのですが、足場がスポッと全部なくなってしまい何かをしようにも雲をつかむような感じの中で生きているというか。
飯田:場所によっても違うみたいですね。20キロ圏内に家があって帰りたくても帰れない人と、計画的避難区域や緊急時避難準備区域の人は家には入れるけど泊まったら駄目とか。すごくややこしい。20キロ圏内の立ち入りは禁止されていましたが、2013年の4月から解除されたり。そういう状況の中で、その地区に住む人それぞれの感情があると思うんです。
穴澤:映画の中では、宍戸さんも個人ボランティアの人と一緒に20キロ圏内にばんばん入ってますよね? 結構20キロ圏内の映像がありますが、あれって問題ないんですか。
飯田:一応覚悟はしといてね、とは言いましたけど。だんだん厳しくなっているので。
穴澤:ボランティアの人も覚悟を決めて入っているわけですよね。それは素直にすごいと思います。関東から何時間もかけて毎週通っている人もいますし。で、なぜそこまでできるんですかって質問するシーンで、笑いながら「出会っちゃったから」と答えるんですよね。
宍戸:ああ、永澤さんですね。
穴澤:ほかのボランティアの人を見ても感じるのですが、自分に同じことができるかと聞かれたら、できませんから。本当に頭がさがる思いで映画を観ていました。
飯田:映画の後半は2012年10月〜11月の映像なので、まだ半年前のことです。そこで伝えた状況は今も続いているんですよね。
穴澤:だから、原発20キロ圏内のことだけじゃないですけど、今も被災地はそんな状態なんだということを知ってもらう意味で、この映画は多くの人に観てもらいたいと思いますね。
宍戸:そう言っていただけると嬉しいです。
穴澤:宍戸さんは、今も被災地に通っているのですか?
宍戸:通っていますよ。普段はまだ実家のある宮城にいるので。
飯田:やまゆりファームの一員として働いている感じだよね。
穴澤:今もカメラは回しているんですか?
宍戸:今はほとんど撮ってないです。
穴澤:この映画は、別に終わりがある話ではないじゃないですか。だから撮っているのかなと思ったのですが。
宍戸:ほとんど撮ってはいませんが、ボランティアをしながら被災地の変化を見ています。それで撮るべきタイミングがきたら撮ろうと思っています。この前、映画の冒頭に出てくる小暮さんが、保護をした猫のみーちゃんにマイクロチップを入れたんです。そこは撮らせてもらいました。
※編集室注:映画の冒頭で宍戸監督がインタビューをした男性が小暮さん。お好み焼き屋を営む小暮さんの店は一階の天井まで津波が達し、その店の前に現れた2匹の猫を「みーちゃん」と呼びフードを与えます。その中で、残ったメス猫のみーちゃんが小暮さんの家族になりました。
穴澤:津波を生き延びた猫に小暮さんがマイクロチップを。へぇ、変われば変わるもんだなぁ。じゃあ、そのうち続編も観られるのかな。
飯田:まずは6月から公開されるこの映画を広く知ってもらいたいですね。
穴澤:そうですね。僕はパート1を観てからパート2を観てもいいと思うし、その逆でもいいし、とにかく内容は違うけれど2本とも多くの人に観てもらいたいと思っています。これからも応援できることがあれば協力しますよ。
宍戸:ありがとうございます。
穴澤:いえいえ、今回はいろいろお話を聞かせていただいて、こちらこそありがとうございました。
作品情報
『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災 』
大津波に襲われた宮城県石巻市。原発事故に翻弄されつづける福島県。東日本大震災では犬や猫、牛などの動物たちも被災しました。動物たちが伝える無言の声、その声に耳を澄まし動きだす人々。別れ、再びめぐり逢ういのちといのち。動物たちと人々が過ごした3・11からの600日を見つめます。 2009年に劇場公開され話題を巻き起こしたドキュメンタリー映画「犬と猫と人間と」の飯田基晴監督がプロデューサーとして製作を指揮、宮城県出身の若手監督宍戸大裕が震災下を生きぬく動物たちと人々に迫ります。
監督・撮影:宍戸大裕
構成・編集・プロデューサー:飯田基晴
製作:映像グループ ローポジション
2013年6月1日(土)より渋谷ユーロスペースほか、全国順次公開決定
公式サイト http://inunekoningen2.com/
6月9日(日)14:00の回上映終了後 穴澤賢さん、宍戸監督、飯田プロデューサーによるトークショーを開催します。
会場:ユーロスペース http://inunekoningen2.com/news/?p=347
作者プロフィール
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宍戸 大裕(ししど だいすけ)
1982年、宮城県仙台市生まれ。宮城県名取市在住。 学生時代、本作のプロデューサーでもある映像作家の飯田基晴氏や土屋トカチ氏(『フツーの仕事がしたい』監督)が主催する映像サークル「風の集い」に参加し、映像製作を学ぶ。 学生時代の作品に、高尾山(東京)へのトンネル開発計画と、それに反対する住民による自然保護運動の姿を追ったドキュメンタリー作品『高尾山二十四年目の記憶』がある。福祉関係のNPO勤務を経て、現在は映像製作に携わる。
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飯田 基晴(いいだ もとはる)
1973年神奈川県横浜市生まれ。 96年より新宿でボランティアとして野宿の人々と関わり、98年よりビデオ、テレビ等で野宿者の状況を発表。フリーで映像製作を行う。2006年、仲間と「映像グループ ローポジション」を設立。監督作品として、『あしがらさん』(02年)、『今日も焙煎日和』(07年)、『犬と猫と人間と』(09年)、「逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者」(12年)。2010年、初の著書「犬と猫と人間と いのちをめぐる旅」を出版、さらに『犬と猫と人間と』のダイジェスト版DVD『いぬとねことにんげんと』(11年)などを製作。本作では構成・編集・プロデュースを務める。
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穴澤賢(あなざわまさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に「ひとりと一匹」(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック「Another Side Of Music」(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った「またね、富士丸。」(世界文化社)などがある。2012年には、実話をもとにした猫の絵本「明日もいっしょにおきようね」(草思社)を手がける。酒好き。
Another Days 富士丸な日々
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