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犬のこと猫のこと 映画『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』公開記念インタビュー

穴澤:どのくらいのタイミングから動物にスポットを当ててみようと思ったのでしょう。

宍戸:最初はいくつか同時進行で撮っていたんです。沿岸部で孤立した高齢の方や南相馬の商店の方のもとに通ったり。そんな中で2011年3月下旬ころだったと思いますが、飯田さんから「アニマルクラブ石巻の様子を見てきてくれないか?」と頼まれたんです。

飯田:本来なら2011年5月にアニマルクラブ石巻が前作の「犬と猫と人間と」の上映会をやってくださる予定だったんです。その準備もしていたのですが、そんなときに震災が起こって。それで全然連絡が取れなくなったので心配だから宍戸くんにお願いしたんです。結果、代表の阿部さんは無事だとわかってホッとしたのですが、そこから宍戸くんがアニマルクラブ石巻に通い始めたんです。

『犬と猫と人間と2』より 

穴澤:飯田さんご自身が被災地にはじめて行ったのはいつですか。

飯田:2011年4月の後半だったと思います。

穴澤:どうでした? 実際に自分の目で見てみて。

飯田:それまでの1カ月でたくさん報道されていましたし、映像も見てはいましたけど、行ってみたら本当に起きたことなのだと。宍戸くんに車で案内してもらったのですが、沿岸部を1時間走ろうが2時間走ろうが、延々と瓦礫が並んでいる景色が続きます。そのスケールはとても映像では表せない。本当に初めて見る光景でした。

宍戸:このとき、飯田さんから「6月に東京で前作『犬と猫と人間と』の上映会があるけど、これまで撮り貯めた映像を発表してみないか」と誘っていただきました。このころから、動物の映像を撮ることに決め、福島原発の20キロ圏内に入るようになったんです。

飯田:とにかく彼のやっていることを形にしてやりたい、サポートをするのは自分の役割だと思っていました。被災地にはドキュメンタリー映画の作り手の仲間たちも入っていましたし、そこで彼の特色を出すにはどうすればいいだろうと考えました。アニマルクラブ石巻に通っているみたいだし、動物をテーマにしてみればどうかと提案したのです。

『犬と猫と人間と2』より

穴澤:ちなみに、宍戸さんは撮っている間のお仕事はどうしていたのですか?

宍戸:当時は就職して半年だったのですが、被災地に入る最初の4カ月は休職をもらっていました。

飯田:就職して半年しか経ってないのに4カ月休職って、すごい話じゃないですか。でも何かを作ろうと思ったら4カ月ではできるわけがない。だから、どうするのかなと思っていたんです。ようやくテーマが動物と定まってきたところで、もしかしてやめるのかと。

穴澤:飯田さんとしては、それは全部宍戸さんが決めることだと考えていたんですね。宍戸さん、仕事を辞めていますよね。

宍戸:2011年7月に休職が切れるとき、会社からどうすると聞かれて辞めさせてくださいと伝えました。

穴澤:仕事を辞めてまで映像を撮るんだという気持ちにさせていたのは何だったのですか。

宍戸:被災したのは人間だけじゃないんだということを知ってほしかったです。犬も猫も、それに牛も。

飯田:ただ、映画にするにはやっぱり資金が必要です。テレビドキュメンタリーの企画公募にも出しましたが残念ながら採用されなかったので、自主制作でいくしかないだろうと。それでも撮っていこうという宍戸くんの強い気持ちを感じました。

vol.3に続く

次回予告

被災したのは人間だけじゃない。そんな思いで動物たちの姿を撮る決意をした宍戸監督。
次回は600日にも及んだ撮影の話、「犬と猫と人間と2」と付けられた理由についてお聞きします。

作品情報

『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災 』

大津波に襲われた宮城県石巻市。原発事故に翻弄されつづける福島県。東日本大震災では犬や猫、牛などの動物たちも被災しました。動物たちが伝える無言の声、その声に耳を澄まし動きだす人々。別れ、再びめぐり逢ういのちといのち。動物たちと人々が過ごした3・11からの500日を見つめます。 2009年に劇場公開され話題を巻き起こしたドキュメンタリー映画「犬と猫と人間と」の飯田基晴監督がプロデューサーとして製作を指揮、宮城県出身の若手監督宍戸大裕が震災下を生きぬく動物たちと人々に迫ります。
監督・撮影・編集:宍戸大裕
プロデューサー:飯田基晴
製作:映像グループ ローポジション
 

2013年6月1日(土)より渋谷ユーロスペースほか、全国順次公開決定
公式サイト http://inunekoningen2.com/

作者プロフィール

宍戸 大裕(ししど だいすけ)

1982年、宮城県仙台市生まれ。宮城県名取市在住。 学生時代、本作のプロデューサーでもある映像作家の飯田基晴氏や土屋トカチ氏(『フツーの仕事がしたい』監督)が主催する映像サークル「風の集い」に参加し、映像製作を学ぶ。 学生時代の作品に、高尾山(東京)へのトンネル開発計画と、それに反対する住民による自然保護運動の姿を追ったドキュメンタリー作品『高尾山二十四年目の記憶』がある。福祉関係のNPO勤務を経て、現在は映像製作に携わる。

飯田 基晴(いいだ もとはる)

1973年神奈川県横浜市生まれ。 96年より新宿でボランティアとして野宿の人々と関わり、98年よりビデオ、テレビ等で野宿者の状況を発表。フリーで映像製作を行う。2006年、仲間と「映像グループ ローポジション」を設立。監督作品として、『あしがらさん』(02年)、『今日も焙煎日和』(07年)、『犬と猫と人間と』(09年)、「逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者」(12年)。2010年、初の著書「犬と猫と人間と いのちをめぐる旅」を出版、さらに『犬と猫と人間と』のダイジェスト版DVD『いぬとねことにんげんと』(11年)などを製作。本作では構成・編集・プロデュースを務める。

穴澤賢(あなざわまさる)

1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に「ひとりと一匹」(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック「Another Side Of Music」(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った「またね、富士丸。」(世界文化社)などがある。2012年には、実話をもとにした猫の絵本「明日もいっしょにおきようね」(草思社)を手がける。酒好き。
Another Days    富士丸な日々

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Vol.2 何もわからない状態から動物にテーマを絞るまで(全4回)6月に公開となる映画「犬と猫と人間と2」。これまで断片的にしか取りあげられなかった被災地の人と動物に迫ったドキュメンタリー映画です。本サイトで「犬のはなし」を連載中の穴澤賢さんをナビゲーターに迎え、前作の監督であり今作では構成・編集・プロデューサーをつとめた飯田基晴さんと、監督の宍戸大裕さんに話を伺いました。写真左より、構成・編 g6n2u9000000bdhu
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