犬や猫のみみより情報やニュース、コラム、ドッグカフェ、動物病院などの施設情報は『いぬのきもちWeb・ねこのきもちWeb』
THE WANDERLAND for Dogs, Cats and Us
日本を代表する文化であるマンガには、犬や猫が活躍する作品もたくさんあります。そこで、広く深くマンガを知る書店のコミック担当者に、好きな犬猫登場マンガを選んでもらい、ランキングをつけていただきました。
今回は、まず関西最大級のコミック専門店、「喜久屋書店 漫画館」でコミック担当歴十数年のベテラン・榎本さんのセレクトを。そして後半は、日本最大級の書店、「MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店」のベテランコミック担当者、八木さんのセレクトも拝見!
◎いぬ漫画セレクション by 喜久屋書店 漫画館 阿倍野店・榎本年孝さん
榎本さん’s ランキング
1位 『いとしのムーコ』
【どんな作品?】
柴犬ムーコは、吹きガラス職人こまつさんのことが大好き。お鼻をつやつやさせてダンスを踊ったり、こまつさんがガラスを吹く姿の真似をしてタオルを引っ張ったり、犬目線でいろいろなリアクションを繰り広げるムーコがとってもラブリーです。
【榎本さんのツボ!!】
「まっすぐでおバカなムーコのキャラクターがかわいい!! こまつさんが大好きなあまり、犬になってほしいと本気で思っていたり、構ってもらえないとアレコレ想像してパニック気味になったり、何か起こるたびに盛り上がって納得して、ハテナマーク浮かべて……もうてんやわんや。ムーコの独り言や心の叫びの聞き手として、ムーコの日常に立ち合っている気分で楽しめますよ」
前回のリブロ小池さんに続き、榎本さんも「ムーコ」をいちばんにセレクト。犬が本当は何を言いたいのか知りたい!……という犬好き万人の願いを形にしたことも、幅広い人気の理由のひとつかも。
2位 『きのこいぬ』
【どんな作品?】
愛犬・はなこを亡くして傷心の絵本作家・夕闇ほたる。庭に生えたピンクのきのこを眺めていたら、もぞもぞと動き出したそれは実は犬、「きのこいぬ」だった……。不思議でかわいい謎の生き物「きのこいぬ」がきっとあなたをいやしてくれます。
【榎本さんのツボ!!】
「庭に生えたキノコが犬になるという奇想天外な発想がツボ。きのこいぬは普通の犬よりポヨンとした体型ですが、ジャンプもするし、ご機嫌なときはかわいくブンブン、シッポを振ります。ただし目覚めには耳のキノコから胞子を飛ばしているし、お湯に浸かるといい出汁が出そうな雰囲気。アレッ!犬マンガかな? ちょっと違うかも?」
前回も「番外編」に選ばれた『きのこいぬ』。この不思議かわいい謎の生き物は、なぜ突然、姿を現したのか!? そしてなぜ、いつもメロンパンを食べ、文字を書く練習をし、ほたるの原稿の裏にいっぱい落書きをし、タコヤキのあとにはアイスを食べるのかっ!? そんな小さな謎の答えを知るとき、じんわりと感動も広がるはず。
3位 『しばいぬ子さん』
【どんな作品?】
ちょっぴりクールな女子中学生・石橋茶子と、隣りの席になった級友しばいぬ子さんとのごくごく普通の中学生ライフ。ただ、いぬ子さんがあまりにも「犬っぽい(!?)」ことを除けば……。
【榎本さんのツボ!!】
「いろんな意味で衝撃!!の4コマ漫画。見た目は犬なのに、ごく普通の?中学生・しばいぬ子さんと、いぬ子さんが犬っぽいことを当たり前に受け止める級友たち(隣りの席の茶子がツッコミを入れることはあっても)。カバーイラストからもわかるように見た目はあまりにも犬そっくりで、行動も少々……。著者も『犬なの? と聞かれますが、犬と人を半分で割った感じ。犬みたいな人ということで……』とあとがきの中で濁しています。いぬ子さん、本当はどうなんでしょう? おもしろさはお墨付き。一気に読んでしまいますよ!!」
「なんだこの犬は?」と可愛がられ(?)、単行本化される前にアニメ化が決まったという本書(←あとがきまんがより)。犬っぽいことを自覚しているのか、いないのか。いぬ子さんと茶子のやりとり、茶子のつぶやきがおもしろすぎます。さらにいぬ子さんワールドに浸りたい人には、DVD「しばいぬ子さん」やCD「しばいぬ子さんのうた」もありますよ。アニメは毎週日曜夜22:27〜22:29PMに、ニコニコ動画/楽天ShowTimeにて無料配信中。(2013年3月1日現在)
4位 『イヌナキ』
【どんな作品?】
運命が交差した犬と人の奇跡のような物語を描く読み切りシリーズ。「犬を迎える」は、お盆の時期に老人が過去に一緒に暮らした忘れられない犬たちを自宅の庭に迎える幻想的な物語。最終話の「ある犬の物語〔チビ〕」では、川で空き缶を拾う犬として有名になった犬の運命が描かれます。
【榎本さんのツボ!!】
「人がいて、犬がいて、暮らしがある。雑種だったり、老犬だったり、ちょっと情けない犬たち。いちど関われば互いの日常が交差し、そして一生が紡がれていく……。昔から人と心を通わせ、人に寄り添いながら生きてきた犬。彼らの不思議な運命を感じさせるストーリーの数々が心に沁みます」
著者の石川優吾さんは「漫画界きっての犬飼い人」(ジャンプ改webより)というだけあって、どの犬も実に表情豊か。嬉しい時、悲しい時、とぼけている時、愛情を伝えたい時……ちゃんと犬の体温を感じる表情・姿で描かれているため、現実離れした物語であってもリアリティが感じられます。切なくても時折読み返したくなる余韻に満ちた一冊です。
5位 『猟犬探偵』
【どんな作品?】
失踪した猟犬探しを生業とするアウトロー探偵・竜門卓と相棒の犬ジョーとの活躍を描いたハードボイルド叙事詩。生業といっても探す犬の犬種は限定し、謝礼も自分で決めた額しか受け取らない。そんなストイックでひと筋縄ではいかない男のもとにまた新たな犬探しの依頼が舞い込み……。
【榎本さんのツボ!!】
「山麓のログハウスで相棒の犬ジョーと暮らす探偵の竜門、彼を時折訪れる訪問者がもたらす犬がらみの厄介な依頼、そこから広がる深みのあるストーリー……どこをどう切り取っても、『浮気調査が探偵の仕事』みたいな現代から遠く離れたハードボイルドな世界にワクワクします。猟犬好き、ストイックな探偵もの好きな人にもおすすめです!」
『孤独のグルメ』(原作:久住昌之)、『『坊ちゃん』の時代』(原作:関川夏央)ほか数多くの名作がある谷口ジロー氏は、『犬を飼う』『神の犬』『ブランカ』など犬をテーマにした作品でも知られる存在。壮大で奥行きのある作品世界、緻密で美しい絵の描写は、もはや職人技を通り越して芸術の領域。谷口氏が原作に惚れ込んで描いたという本書もまたしかり。言葉が通じる人間同士以上にわかりあっている様子の相棒ジョーとのコンビも見ていてスカッとします。
永遠の一冊:『犬を飼う』
【どんな作品?】
郊外の一軒家に引っ越した谷口夫妻は、子供の頃から夢だった犬との暮らしを始めます。「タム」と名付けた仔犬は夫婦にかわいがられ、一緒に遊んだり散歩したりしながら成長し、いつしか14才の老犬に。著者は衰えていくタムに寄り添い、いたわり、記録し続け……。愛犬の死後、猫を飼うことになる顛末を描いた「そして…猫を飼う」も収録。
【榎本さんのツボ!!】
「愛犬との死別を克明に描いた谷口ジロー氏の『犬を飼う』は、永遠の一冊だと思います。最期のその瞬間までそばに寄り添うことで、犬も人も納得してその時を迎え、悲しみを乗り越えていけるのでは……。犬を飼うことについて、生きること・死ぬことについて、深く考えさせられる名作です」
『猟犬探偵』と同じ著者の作品。1992年に初版が発行されて以来、版を重ね読まれ続けています。作品の最後で語っているように「たかが犬一匹……しかし、なくしたものがこれほど大きなものだとは思わなかった」という言葉はすべての愛犬家に切なく迫ります……。そして、悲しみをいやしてくれるのは、時間と新たな命の存在……。その後、猫を迎えた夫妻の明るい表情に救われます。