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初対面の人となかなか打ち解けられない人も、いぬやねこがいるとそれだけでリラックスできたりするものです。その効果を期待して、最近ではベッコン(ペットと暮らす人同士の合コン)が人気だそうですが、動物にはその場の雰囲気を柔らかくしたり、人の気持ちを落ち着かせたりする特別なチカラがありますよね。
絵本でも同じことがいえると思います。ストーリーには直接関係していなくても、動物とのやりとりで、登場人物の性格がわかったり、緊迫した場面でも読み手の緊張をほぐしたり……。今回は、そんなグッジョブ! な脇役たちをご紹介します。
レトロなのに斬新、アートな写真絵本

この写真絵本は、1960年頃に、当時日本で暮らしていたベティさんと写真家の細江さんが制作。1967年に『TAKACHAN AND I』としてアメリカで刊行。日本で出版されたのは、それから30年も後のこと。モノクロ写真であることがより雰囲気を盛り上げて、60年代のニッポンの風景がなんとも素敵に写し出されています。
アメリカの砂浜で穴を掘って遊んでいたランシブル、謎のトンネルにぶつかりたどりついた先はニッポン。ブラックドラゴンの囚われの身だったたかちゃんに助けてもらうのでした。読み応えのあるストーリーで、大人も楽しめます。
ランシブルは、たかちゃんを守りながらもドラゴンとの約束を果たそうとするのですが、そのなんとも勇敢な姿が頼もしい。ランシブルはベティさんの愛犬で、ワイマラナー。なかなかの演技派なのでした。

程よい距離のおとなの関係

この絵本の翻訳者は村上春樹さん。村上さんが、アメリカの街を歩いていて、偶然見つけたものだそう。「よくもまぁ、見つけてくださいました!」そうお礼が言いたいくらい、私も大好きな1匹のねこと暮らすおじいさんのおはなし。
おじいさんとねこは、いつも一緒につりに行くのですが、ある日、ねこがあまりに起きてこないものだから、おじいさんはひとりで出かけてしまうのです、ちょっと心ない言葉を残して……。
舞台がテキサスだからかもしれませんが、絵からも伝わる茶色い砂埃が舞ってくるようで、そんなドライな感じがいいんです。ふっきらぼうだけど、心根は優しい頑固もの同士の物語。飼い主とねこ、おとなとおとなのさらっとした関係に憧れます。静かな絵本、ケンタッキーバーボンが似合いそうです。

人気のマドレーヌを助けた犬

世界中の子どもたちに人気で、日本でも専門のショップができるほどのマドレーヌシリーズに、犬が登場するおはなしがあります。
マドレーヌが川に落ちて溺れかかった時に助けてくれた犬、やがて寄宿舎で暮らすようになるジュヌビエーブ。マドレーヌや寄宿舎に暮らす女の子たちが付けた名前ですが、日本人にとっては、なんとも発音しにくい(笑)
ジュヌビエーブは、学校検査に来た評議員たちによって寄宿舎を追い出されてしまうのですが、そこはただでは起きなくて、地上3センチの浮遊感……とでもいうような、ちゃっかり愉快な結末が待っているのでした。
脇役だけど、時には主役にもなり得る存在感、それが雑種犬ジュヌビエーブ。寄宿舎の女の子たちをしっかり見守る賢い犬なのです。


今回で石黒由紀子さんによる「世界の絵本」紹介記事は終了します。
次回からはラジオDJ南美布さんによる「犬と猫が登場する音楽CD」紹介記事がスタートします!
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石黒由紀子/エッセイスト
女性誌や愛犬誌を中心に、犬猫に関することや日々の暮らしについてを執筆。近著には自身の犬猫について綴った『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』(幻冬舎)
www.blueorange.co.jp/yuruyuru/index.htm
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