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大福のいない部屋【穴澤賢の犬のはなし】

大福のいない部屋

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大吉も福助も、体重10キロちょいの中型犬だ。しかしその存在の大きさに気付かされる出来事があった。
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少し前に、ある書籍の編集作業を手伝うことになった。日々の仕事でもまぁまぁ手一杯なのに、イレギュラーな仕事が増えると後で自分の首を締めることになるのはわかっていたが、長年の知り合いからの依頼だったことと、「基本的に来た仕事は断らない(怖くて断れない)」というフリーランス時代からの性分で、引き受けることにした。
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予想は見事に的中し、日々の業務に追われ、なかなかその仕事に取り掛かることができなかった。日を決めて必死にやるのだが、突発的な用事が発生したり、電話がかかってきたりして遅々として進まない。
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これはもう仕方ないと、10月は休日返上で仕事をすることにした。ただ、自分のせいで嫁や大福まで遊びに行けないのは申し訳ない。そこで10月7、8日と、私抜きで嫁たちに八ヶ岳へ遊びに行ってもらうことにした。
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土曜日の朝に嫁と大福を送り出し、私は仕事机に向かっていた。1時間くらいして、どこか違和感を感じた。すぐに原因に気づく。いつも後ろにいるはずの大吉と福助がいないのだ。ふだんは何をするでもない、ただ寝ているだけの彼らがいないだけで、部屋の雰囲気が全然違う。「なんだこれ、まだ1時間しか経っていないのに」と思いつつ仕事に没頭する。
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が、また1時間くらいすると違和感を感じるということを繰り返していた。何度振り向いても彼らはいない。水を飲みにリビングに行っても、やっぱりいない。いないことはわかっているのだが、いつも一緒にいるから、いないことに慣れていないのだ。
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嫁がいないのはいつものことだから慣れているのだが、大福が家にいないことはない。出かけても、帰宅すれば彼らはいつも家にいる。もしかしたら、今の家に引っ越してから家に完全にひとりになったのは、はじめてかもしれない。
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そんなこと言っていても仕方ないので、必死で仕事をした。夕方になると、つい習慣で「あ、そろそろ散歩行かないと」と思うのだが、すぐ行かなくていいことに気づく。なんだか調子が狂う。夜、ひとりで晩酌しているときにも違和感はずっと続いていた。いや、もっと大きくなっていた。あんな小さい奴らがいないだけで、部屋がガランとしているのだ。
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これと似たような感覚を味わったことがある。富士丸がいなくなった後がそうだった。あのときは、「あ、もういないんだ」と思う度、胸が締め付けられるような気がした。が、今回は「明日には帰ってくる!」という点が違った。これは天と地ほどの違いがある。
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正直、寂しくて仕方なかった。わずか1日なのに、会いたくて仕方なかった。これには自分でもびっくりした。いつの間にそんなに大きな存在になっていたのか。で、日曜の夜に帰ってきた大吉と福助をわしゃわしゃと出迎えたのだが、彼らはわりとふだん通りで、なんだか温度差を感じるのだった。
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