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そばに犬がいると寿命がのびる？【穴澤賢の犬のはなし】
【穴澤賢の犬のはなし】
よく犬と暮らすと人は健康になる、という話を耳にする。実際に犬と暮らす者として、あまり実感はなかったが、どうもワンコには人を元気にする力があるらしい。
先日、少し前にここでも紹介した映画『犬に名前をつける日』のプロモーションで、ノンフィクションライターの片野ゆかさんと対談をしてきたのだが、そこで監督の山田あかねさんからとても興味深い話を聞いた。
映画の中に、神奈川県・横須賀市にある「さくらの里 山科」という老人ホームが出てくるのだが、そこは保護団体などから保護犬を受け入れている。全部で何頭くらいいるのかわからなかったが、とにかく犬たちは施設の中では自由行動。食堂にも出入り自由だし、お年寄りのベッドの上にも平気でのぼる。まるで一般家庭で暮らすように、好きなようにさせているのだ。
足腰の不自由なおばあさんを朝起こすべく、犬がベッドに飛び乗ったりして、一見するとめちゃくちゃやっているように見えるのだが、当のおばあちゃんは「重たいですよ、そりゃ」とか言いつつ、すごく嬉しそうなのだ。さらに食堂で食事するおじいちゃんのそばにピッタリと寄り添って、じっと何かくれるのを待っている犬もいる。そして、おじいちゃんは「ちょっとだけだぞ」とか言いつつ、犬が食べても平気な野菜などを分け与えたりする。
犬が苦手な人がいたらどうするんだろうと心配になったが、みなさん犬が好きらしい。施設の脇にはドッグランもあり、お年寄りが無理して散歩させなくても、犬たちは運動できる。いい施設だなぁと思い、後で監督に聞いたら、全国から視察が殺到しているらしい。しかし、簡単なように見えて「さくらの里 山科」には動物をきちんと扱える人が勤務している。しかも人間の介護も同時にしなくてはならない。だから、どこでもそう簡単に真似できるものでもないという。
そして「さくらの里 山科」にはもっと驚く事実がある。施設に犬がいるという噂は全国に広まって、今や順番待ちの状態だそうだが、全然空かないらしい。というのも、この施設に入った時点では元気がなくて塞ぎがちだったお年寄りたちが、犬たちと触れ合う中で、どんどん元気になっていくというのだ。中には、麻痺して動かなかった手が、犬をなでたいがために動かせるようになったという人までいるという。そんな調子で、亡くなるお年寄りが極端に少ないため、なかなか空きが出ないそうだ。
やはり犬には、人を元気にする力があるようだ。たしかに私も今思えば、犬がいない時期は元気ではなかった。今は元気だと胸を張って言えるが、それは大吉と福助のおかげなのかもしれない。それにしても「さくらの里 山科」みたいな老人ホームが全国にもっとたくさんできればいいのにと思う。自分がもし老人ホームに入るとなったら、絶対犬がいるところがいいもんな。
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