犬の演技力【穴澤賢の犬のはなし】

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犬の演技力

犬と暮らしたことのない人は知らないかもしれないが、犬も演技をする。聞こえているのに寝たふりをしたり、わかっているくせにすっとぼけたりする。つい先日もそんなことがあった。

わが家の場合、私が在宅仕事なので外へ働きに出ている人に比べたら犬の留守番時間は比較的短い。しかし打ち合わせなどで出かけることもあるし、取材で丸一日家を空けることもある。

今は神奈川県鎌倉市に住んでいるので、都内に用事があると行って帰ってくるだけで時間がかかってしまう。戻りが夕方の散歩時間に間に合えばいいのだが、そうそう予定がうまく組めるわけではない。都内に住んでいるときは嫁の両親に留守番をお願いしたりしていたが、遠くなったので毎回頼むのは気が引ける。どうしたものかと困っていると、地元の人がペットのシッターを紹介してくれた。

そんなわけで、最近はあらかじめ留守番が長くなりそうな日があるとペットのシッターに散歩だけお願いしている。そんなに頻繁ではないが、引っ越してからもう何度も頼んでいるので大吉も福助もなついていて、その人が来ると散歩に連れて行ってくれるとわかって喜ぶらしい。

ペットのシッターさんとは最初に面談し、家の鍵を預け、電話やメール、専用の連絡帳でやりとりしている。だから帰宅して連絡帳を見れば、何時に散歩に行って、ウンチはしたのかどうかなどがわかるようになっている。

先日もそんな調子で夕方少し遅めに帰宅して、連絡帳を見たら、大吉と福助の散歩は済んでいてウンチもしたと書いてある。まだ仕事が残っていたので、パソコンに向かっていると、大吉が隣でしきりにノビをする。ん？　散歩のアピールなのはわかるが「お前、散歩行ったはずだよね？」と聞くが、そしらん顔でいつもの散歩前と同じように目を輝かせている。

福助を見ると、大吉を見て察したのか、ソワソワと落ちつきをなくしている。なんとなく散歩に行く空気になっているので「まてまて、行ったんだよな？」と再度確認するが、無視してしっぽをふりふり。もしかして行ってないのか？　いやいや連絡帳には行ったと書いてある。念のため確認しとくかとペットのシッターに電話すると「今日もごきげんにお散歩して、ウンチもしましたよ」とのこと。

なるほど。俺が知らんと思っていていつものように催促しているのか、と気がついた。しかもついさっき行ったばかりなのに、ここしばらく外には出ていません的な顔までしてからに。彼らの魂胆は丸見えなのだが、せっかくなのでその演技に乗っかって「そうだな、今日は留守番が長くて悪かったな、さ、行くか」と散歩に付き合ってやることにしたのだった。