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日本動物福祉協会って、どんな団体? その2【穴澤賢の犬のはなし】

先日、ペット業界の抱える問題に関する特集番組の中で「公益社団法人日本動物福祉協会」という団体の方が話していた。失礼ながら、知らない名前だった。そこで早速、取材を申し込んでみた。すると、意外な事実や、ほとんど報道されない様々な問題を知ることになった。

2回目の今回は、調査員であり獣医師でもある町屋奈さんに、現場の苦労や実際に起きている問題について話を伺いました。
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写真右から穴澤、日本動物福祉協会事務局長の池田康寛さん、獣医師で調査員の町屋奈さん
※ 調査活動の関係上、町屋さんはあまり顔出しできません。ご了承ください

「殺処分ゼロ」の裏で何が起こっているか

穴澤:たぶんこの連載を読んでいる方は、犬猫の殺処分問題についてある程度知っていると思うんです。ですから、その先の話をお聞きしたいと思って来たんですよ。たとえば先日NHKの「クローズアップ現代」の「ペット業界の闇」で出てきた「引取り業者※」のこととか。

※売れ残った子犬や繁殖能力が衰えた繁殖犬を有料で引き取る業者のこと

町屋:厚生労働省が統計を公表してから、犬の登録数は右肩上がりなんです。でも殺処分数は年々減ってきているんですね。それは一見いいことのように思えるんですが、実は数字に表れない表に出ない問題もあるんです。公表されているのは、行政での殺処分数です。つまり、数字に表れない不幸な動物が存在する。そのひとつがいわゆる、悪質な引取り業者ですね。

穴澤:恥ずかしながら、僕も番組を見るまで引取り業者の存在を知りませんでした。でも、需要があるから存在するわけですよね?

町屋:前回の動物愛護法改正で、保健所が犬猫の動物引取り業者からの引取りを拒否できるようになったというのも少なからず影響があると思います。あとは、少し前からの「殺処分ゼロブーム」がありますよね。そこを目指すのはいいことだと思います。が、ただそれによって現場で働く職員がものすごくプレッシャーにさらされることになったのも事実なんです。

穴澤:何がなんでも殺処分ゼロを達成しなくてはならないという。
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町屋:そうですね。保健所などのどこの行政も、一頭でも多くの命を助けるために譲渡・返還に力を入れています。しかし、保健所に連れてこられる原因が無視され、最終的な場所である保健所がものすごく悪者扱いされて、攻撃された時期があったんですよ。

穴澤:現場で働く人は何も悪くないのに。

町屋:そうなんですが、「殺処分ゼロ」を達成しなくてはならないという重圧の結果、どういうことが起きたかというと、やみくもな引取り拒否です。本当にやむを得ない事情を抱えている一般の人からも引き取らない、あるいは収容能力以上の犬猫を抱えてしまう。反対に、どんな犬猫でもどんな人・団体にも譲渡してしまったりとか、新たな問題が生まれています。

穴澤:当然、売れ残ってしまった犬なんて引き取れないから、引取り業者が重宝されると。

町屋:だから、自治体や保護団体の保護施設で動物福祉って守られているの? 引取りを拒否された犬猫はどうなってるの? 殺処分ゼロ=不幸な動物が減っているということなの? という疑問が出てきますよね。
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穴澤:引取り業者に引き取られた犬のいる場所をテレビで見ましたけど、ひどかったですもん。檻に入れられて、ウンチも垂れ流しで、散歩とかもしないでしょ?

町屋:もちろん散歩なんて連れて行ってもらえません。床は格子状になっていて、それによって足が変形してしまったり、爪は伸びっぱなし、ケガや病気になってもそのまま。あのコたちは、転売されない限りあそこから一生出られないんです。そういう悪質な引取り業者が活性化してきているという現状があります。
※こちらをクリックすると画像が見られます。(ショッキングな画像ですのでご注意ください)
町屋さんたちの調査で明らかになった、引取り業者の劣悪な犬舎

穴澤:テレビに出ていた引取り業者は、町屋さんたちが刑事告発したんですよね?

町屋:はい。地道に事実を積み上げて、しかるべき手続きを取って告発はしましたが、それで問題が解決するわけじゃないです。悪質な動物取扱業者はあそこだけじゃないですし。

穴澤:あの劣悪な環境から保護された衰弱したダックスフンドが、獣医師の懸命な介護で一瞬意識を取り戻すシーンとか、見てられなかったですね。結局は亡くなっちゃったんですけど。
※こちらをクリックすると画像が見られます。(ショッキングな画像ですのでご注意ください)
町屋さんたちの調査で明らかになった、引取り業者の劣悪な犬舎

町屋:行政だけでなく、今度は保護団体でも収容能力以上の犬猫を抱えてしまったり。犬猫の飼養環境・管理を考えたとき、問題は引取り業者だけじゃないんですよ。

穴澤:そうなんですよね。そういう団体が崩壊したら、また同じことの繰り返しになりますからね。保護活動自体には頭が下がる思いなのですが、危ういよなぁと思うことがあります。

町屋:だから何度も言うように「殺処分ゼロ」を目指すこと自体はいいと思うんです。ただ、その理想を追いかけるあまり、自治体が抱える適度な重圧や、その裏では悪質な引取り業者とか、崩壊寸前の保護団体とか、数字に表れないさまざまな問題が起こっていることも知ってもらいたいと思います。

穴澤:そうですよね。そもそも、原因はもっと別のところにあるわけですしね。
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(つづく)
【お知らせ】
2016年9月17日(土)、24日(土)に「動物愛護ふれあいフェスティバル」が開催されます。日本動物福祉協会も協力しているイベントになりますので、興味ある方はぜひご来場ください。
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【次回予告】
調査員であり獣医師でもある町屋奈さんに、日本動物福祉協会が目指す今後のビジョンについてお聞きします。
穴澤賢の最新刊『また、犬と暮らして。』発売中
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