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日本動物福祉協会って、どんな団体?【穴澤賢の犬のはなし】

日本動物福祉協会って、どんな団体?

先日、ペット業界の抱える問題に関する特集番組の中で「公益社団法人日本動物福祉協会」という団体の方が話していた。失礼ながら、知らない名前だった。そこで早速、取材を申し込んでみた。すると、意外な事実や、ほとんど報道されない様々な問題を知ることになった。

そんなわけで、今回から3回に渡って、取材した際の話をお届けします。第1回は、主に団体の活動内容を事務局長の池田康寛さんに、第2回からはペット業界の抱える問題について獣医師で調査員の町屋奈さんに、それぞれ話を伺いました。
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写真右から穴澤、日本動物福祉協会事務局長の池田康寛さん、獣医師で調査員の町屋奈さん
※ 調査活動の関係上、町屋さんはあまり顔出しできません。ご了承ください

協会の活動内容とテーマとは

穴澤:日本動物福祉協会は、どういった経緯で、いつ頃できたのですか?

池田:日本動物福祉協会(Japan Animal Welfare Society・略称JAWS)は、昭和31年(1956年)に誕生し、名誉総裁に常陸宮妃華子殿下を戴き、現在の会員数は2000名。全国に6つの支部があります。発足当時の中心メンバーは欧・米の駐日大使夫人達で、欧米と比較して、日本の動物福祉レベルの低さや。大学病院や民間の実験動物の収容施設の惨状を「何とか改善しないと」と立ち上がったのが発端です。
活動資金には、会員からの会費、一般からのご寄付、募金活動を通して得た収入を充てています。今では、日本の動物福祉の中核を担う団体として、環境省や各都道府県はもちろん、海外からも信頼されています。
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池田:動物への愛護と福祉というのは、一見似ているように思われるかもしれません。愛護は、人間の視点から動物に対して「かわいそう」と思う気持ち、どちらかというと感情的・主観的な要素が大きいんです。福祉というのは動物を中心にして、「その動物が何を必要としているか」つまり、科学的・客観的に考える点で違います。

穴澤:たしかに、人間目線と動物の本当の幸せは違う場合もありますよね。

池田:たとえば、ただ生きてさえいれば劣悪な環境でもいいのかというと、それは違うでしょう、ということです。その動物の生活の質(QOL)を考え、守ることが動物福祉の基本的な考え方です。
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穴澤:なるほど。では主な活動として、どんなことをされているんですか?

池田:代表的なのは、たとえば平成26年度だと山口、佐賀、茨城の3つの県で各県の獣医師会のご後援のもと、犬・猫の不妊・去勢手術費用の一部を助成する「捨て犬・捨て猫防止キャンペーン」を行いました。

穴澤:どうしてその3県なのでしょう。

池田:対象県を選ぶにあたって、①殺処分数が多い県、②行政・獣医師会による助成金制度が十分整っていない県、③本キャンペーンを行ったことがない県、を考慮して予算内で検討しています。平成27年度は沖縄と香川、というように、毎年何県かずつ、そうやってもう何十年もやってるんです。
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避妊・去勢手術代を助成する『捨て犬・捨て猫防止キャンペーン』は、平成28年度で23年目に突入している。画像は日本動物福祉協会Webサイトより

穴澤:動物福祉協会の予算は、全部寄付ですか?

池田:そうです。基本的には個人と法人会員からの寄付です。

穴澤:会員は、何名くらいいるのでしょう?

池田:(資料を指差して)ここに全部書いてありますけど、個人会員で2000名程度です。

穴澤:(資料を見ながら)賛助会員の年会費3000円とは、意外と安いんですね。あと、この法人会員32社って、少なくないですか?

池田:はい、少ないんです(笑)。

穴澤:すいません、思っていたよりかなり少なくてびっくりしました。

池田:そうなんです。皆さんにそう言われます。会員数は万単位でいると思ってたのに、と。

穴澤:なんとなくもっと潤沢な予算があると思っていました。(資料を見ながら)収支も全部出ているんですね。

池田:公益社団法人なので、すべて公開します。
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穴澤:(事務所を見ながら)思っていたより、人数も少ないですね。

池田:私を含めて事務員(調査員)が4人、とパートのスタッフが2人の計6名ですけど、理事には一銭も払ったことがないですから、出張費も含めて。

穴澤:「日本動物福祉協会」という名前から、来る前は、きっと事務所も広くて、たくさん働いている人がいて、会員も多くて、予算も潤沢で、と勝手にイメージしてたんですが、実際に来てみたら全然違うので驚きました、失礼ながら(笑)。

池田:少数精鋭で動物福祉のため多岐にわたる活動をしています(笑)。
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池田:それにさっきお話した不妊・去勢手術の助成金も、申請が多ければ抽選をすることになっているのですが、くじ引きのような抽選ではなくて、ひとつずつ応募ハガキに記載いただいた内容をちゃんとチェックしているんですよ。

穴澤:(書類を見ながら)助成金の申請は3000件超えてますもんね。

池田:活動はそれだけじゃないですから。さきほどのキャンペーンとは別に、賛助会員になってくださった方にはのら猫5頭まで不妊・去勢手術費用を助成するというのら猫キャンペーンもはじめました。
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穴澤:年会費3000円で、一律5000円の助成を5頭までって、完全に赤字ですよね?

池田:ノラ猫問題は人災として考えています。また最近では、ノラ猫は残酷な虐待事件の対象とされるケースがあり、全国的な問題となっています。
そのような不幸な猫を減らすには、不妊・去勢の徹底が必要不可欠だと考えていますので、あくまでも予算の範囲内ですが、その助成活動を実施しています。
このほかにも、悪質な業者に対する相談または一般飼い主からの相談があれば視察を行ったり、新しい飼い主さん探しのお手伝いをしたり、一般および行政職員を対象にセミナーを開催するなど、啓発事業にも力を入れています。日本動物福祉協会のホームページを見ていただければ私どもの詳しい活動内容がわかると思います。

穴澤:いや、それはかなり大変そうですね。

池田:清く、正しく、貧しく、美しくをモットーに地道にやってます。
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(つづく)

【次回予告】
調査員であり獣医師でもある町屋奈さんに、現場の苦労や、実際に起きている問題について話を伺います。
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