いなくなっても変な犬【穴澤賢の犬のはなし】

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いなくなっても変な犬

少し前からダイワハウスといっしょに『犬と暮らす家がつくりたい』という企画を進めている。実際に犬飼いである私がアドバイザーとなり、どうすれば犬と人間が快適に暮らせるのかを考え、それらのアイデアを盛り込んだ家を実際に建てるというものだ。そんな大役を仰せつかるのは光栄なことだが、これには「あいつ」の力が大きいように感じる。

詳しい話はあちらの連載の第1回に書いたから割愛するが、簡単にいえばダイワハウスとは以前家を建てようとして頓挫した経緯がある。結果的にかなり迷惑をかけてしまったので、もう二度と声がかかることはないだろうと思っていた。だから今回のオファーがあったときには心底驚いた。

聞けば、ダイワハウスの社内に当時の連載を読んでくれた人がいて、ずっと企画書を出し続けてくれていたという。その人は自身でも犬を飼っているが、富士丸のことが大好きだったらしい。そのこともあって、またいつか犬のための家づくりをする際には私にお願いしたいと思ってくれいたという。ようやくその企画書が通って、今回の企画が実現した。

第1回の原稿がアップされると、その人からメールが届いた。社内でも反響が大きくて驚きましたとのこと。ほかにも社内に当時の連載を読んでくれていた人が多く、回想シーンでリアルにうるっと来ると言っていると。別に泣かせようと思ったわけではないが、反響が大きいのはありがたいことだ。読んでくれている人がたくさんいるんだなと思う反面、こうしてまた家づくりの企画ができるのは、富士丸の力が大きいと思う。

話は変わって、最近海釣りにはまっていてBS釣りビジョン漬けの毎日を送っているのだが、そのことをブログやツイッターで書いていたら、ある日BS釣りビジョンのプロデューサーからメールが届いた。話はとんとん拍子に進み、今度BS釣りビジョンの『五畳半の狼』というトーク番組に出演することになった（1月22日放送なのでこの記事公開日には終わっているが）。

先日その打ち合わせで連絡をくれたプロデューサーとお会いしたのだが、聞けばもともとは奥さんが富士丸の大ファンで、その影響で私のことを知っていたという（現在のブログもちょくちょく見てくれているらしい）。拙著も何冊か購入くださっていて「すいません。この『またね、富士丸。』だけはどうしても未だに読めないんですよ」と謝られてしまった。「いえいえ、全然かまいませんよ」など答えながら、こうしてBS釣りビジョンに出られることになったのも、富士丸のおかげかと思った。

これ以外にも、新たに出会う人から「あぁ！　知ってます、あの富士丸の！」と言われることが結構ある。もう、あいつがいなくなって５年以上経つ。それでもなお、未だにこうして何かといい話を持ってきてくれたりする。今もそばで見守ってくれているとか、そういうロマンチックなことは思わないが、本当に変なやつだ。思い切り抱きしめたいなぁと、今でもときどき思う。