２頭目を迎えて〜福ちゃんの気持ち〜その１【穴澤賢の犬のはなし】

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２頭目を迎えて〜福ちゃんの気持ち〜その１

福助を迎えてから約１週間のことは以前書いたが、それからどうなったのか。彼の抱えるトラウマはどうなったのか。それ以外にも、どういった変化が見られたのか。福助について、そのあたりのことをもうちょっと詳しく。

我が家に来て１週間ほどで、福助の態度に「もしかしてこの人たちは怖くない？」というところくらいまでは進歩が見られた。ただ、依然として自ら進んで近寄ってくることはないし、抱きあげようとすると軽いパニック状態になる。抱きあげるときは、慎重に、優しく声をかけながらでないと、ギャン！と牙をむくのだ。

唯一の救いは、ソファの上にいるとき限定で逃げなくなったのと（ソファの隅で小さくなる）、それ以外でも大吉のことは大好きで常に後ろをちょこちょこと付いてまわっているので、大吉を呼べば福助もいっしょにやって来る、という点。なので、家の中を誘導したりするのは比較的楽になった。

２度目のワクチン接種から２週間以上すぎているので散歩デビューさせてもいいが、試しにリードをつけて（つけるだけで一苦労）少し外へ連れ出してみるとぜんぜん歩こうとしない。まったくコントロールできないので、一週間くらいは室内のみだった。でも家に取り残されるのは嫌みたいで、大吉を連れて散歩に行こうとする度にキャンキャン吠えていた（まったく取り合わなかったが）。

排泄は来てすぐに犬用のトイレスペースでオシッコとウンチをしたので「偉い！」とびっくりしたが、どうやらたまたまだったみたいで、なぜかテレビの脇にある左右のスピーカーの前のラグにするようになっていた。

よくトイレは先住犬が教えるなどと聞くが、大吉の場合はそんな素振りはまったくない。かといって福助はトイレをしつけるとかそういうレベルではないので、スピーカーのあたりにトイレシートを並べておいた。そうすると、毎回そこでする。

そこはトイレではないのだが、決まってそこでするのでトイレシートを置くしかない。トイレシートを置くことで、トイレだと勘違いしてしまう。この悪循環をどこかで絶たねばならないのだが、一度ハマってしまうとなかなか抜け出せない。

しかも微妙にずれたりするので、ラグにもニオイが染みついてしまった。そろそろ捨て時だと思っていたので、ラグを捨ててみたが、福助の中では「トイレ＝スピーカーの前」と固定されてしまったらしい。ちなみにこのトイレ問題、今現在も完全には抜け出せていない。ま、トイレなんて別にどうでもいい。それよりメンタル面のほうが大事だ。

最初のうちは、それこそ「ごめんごめん、ほら、大丈夫だよぉ」などと接していたのだが、一週間くらい経ったころから、そういう腫れ物に触る感じが急に面倒臭くなってきた。トライアルとはいえ、戻すつもりなど申し込んだ時点からない。何か問題が起きたって、全力で解決するべきだと思っていたし、問題が起こるとしたら、おそらく飼い主に原因があると考えていた。

福助に警戒心があるのは、我が家に来る前の経験が原因だろう。福助が過去にどんな怖い思いをしたのかは知らない。想像はできるが、本人ではないからわかってやれない。だからといって、ずっと過去を引きずられても困る。最初は優しく接するようにしていたが、ずっと優しいだけで距離が縮まるとも福助の心の傷が癒えるとも、なんとなく思えなかった。なんだか疲れるし

我が家に来たからには我が家のやり方に従ってもらう。とはいえ、怯える犬の心を開かせる方法など知らない。どう接したらいいのかわからないが、とりあえず変な気は使わないようにした。そして「もう安心していい」ということをわかってくれるのを待つしかないように思えた。あとは「こいつに逆らっても無駄だ」と思わせることも大切だろう。

そんなわけで、１週間過ぎたあたりから、抱き上げようとして、ギャン！と牙をむかれたら「いつまでも鬱陶しいなぁ。はいはい、ほら、噛みたかったら噛めば？」と言いながら、逆に口に手をグッと突っ込んだりするようになった。そういう態度に切り替えると「えぇっ！」と驚いた顔をする福助なのだった。
※噛もうとする犬の口に手を入れることは、場合によっては危険なので、注意をしてください