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ビビリ犬マド、実はたくましい?【穴澤賢の犬のはなし】

Vol.54 ビビリ犬マド、実はたくましい?

先日、代々木公園でお花見会があり、そこで久々にマドと会った。マドとは、ノンフィクションライターの片野ゆかさんの愛犬で、とても可愛らしい顔をしている。マドは以前もこの連載で紹介をした犬だ。飼い主さん募集でもらわれてきた当初から極度のビビリで、片野さんの「ビビリ撲滅キャンペーン」のおかげで最近はずいぶんとマシになってきた。が、それでも知らないところや騒々しい場所では、まだまだ緊張してしまうよう。
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緊張の中に信念があるマド

この日もJR原宿駅から代々木公園へかけての人混みと喧噪にすっかりビビッてしまったらしく、片野さんのスリングの中で固まっていたらしい。到着して降ろしてもらっても、どうしていいのかおろおろしている。その場にいた人たちから「マドー、ひさしぶりー」と声をかけられてもそれどころではないもよう。そんなところへ無神経な大吉ががさつにニオイをかぎに近づいたりするので、ますます余裕がなくなるマド。
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かといって、必要以上に心配したりかまったりしないのが我らの温度なので、そんなマドをよそに人間たちは「カンパーイ!」と宴会がはじまった。マドは片野さんに寄り添っていたが、何げなく味のついていないパンの切れ端を差し出すと、すすすっと近寄ってきてパクッと食べる。そしてまた片野さんのそばへと戻っていく。もう緊張が解けたのかと思いきや、まだ挙動不審な顔をしている。しかし、パンを差し出すとまた食べに来る。いくらビビッていても、食べ物を目にすると「あ、それは別」という感じで食べるのだ。
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不思議に思い、片野さんに「マドって、ビビッていても食べるんですね」と聞くと「マド、どんなときも食べるものは食べるんです」とのこと。これには正直驚いた。なぜなら、大吉にも若干ビビリなところがあるのだが、大吉の場合、完全にビビリモードに入ったら大好きなおやつだろうが何だろうが決して食べないからだ。事実、花見からさかのぼること数日前、春にしてはは珍しく夕方に雷が鳴り響いた。すると雷が苦手な大吉は、ゴロゴロと聞こえた途端に落ち着きがなくなり、部屋の中をうろちょろとしながらガタガタ震えだした。
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「何をビビッとんじゃい、お前は」と笑っても、ぜんぜんダメ。試しにボールを投げてみても、無視。おやつを見せても、興味なし。もう本当にそれどころではないもよう。だからといって、どうすることもできないので好きにすればいいやと無視していたら、寝室かどこかへ消えていったので、たぶんベッドで布団にでもくるまって雷が止むまでひたすら耐えていたのだと思う。情けないったらありゃしない。
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その点、いくらビビリとはいえ、どんなときも食欲を失わないだけの心の余裕があるマドのほうが、キモが据わっているのではないだろうか。しかも人数が増えて持ちよりの料理が次第に増えていくにつれ、マドの食への執着心は緊張を上回り、ビビッていたことなど忘れたかのように、犬に甘い人を見つけては食べ物を催促するまでになっていた。大吉よりたくましいではないか。
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でも、もしかしたら人間もそうかもしれない。失恋して泣いているときにもチョコを食べたりするのは女性だし、そもそも「ヤケ食い」するのも決まって女性ではないか。なぜか男がヤケ食いしたという話は聞いたことがない。しかしどんなときも食欲を失わないということは「生きる」うえでとても重要だ。少なくとも落ち込んだらすぐ食欲をなくしたり、すぐ酒に逃げたりする男よりは断然強い。やはり、犬も人間も根底の部分では女性がしっかりしているということなのだろうか。
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花見の席で、頭に桜の花びらをくっつけたまま食べ物に熱い眼差しを向けているマドを眺めながら、そんなことを思うのだった。
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