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犬との暮らしの私のスタンス【穴澤賢の犬のはなし】

Vol.48 犬との暮らしの私のスタンス

先日、出版社が拙著の文庫化記念パーティーを開いてくれた。その席で犬好きノンフィクションライターの『片野ゆかさん』をゲストに招いて、犬にまつわる話をしたのだが、2人して「そうですよねぇ」と深く共感したことがある。というのは、この10年ほどで犬のしつけや暮らし方が大きく変化したということ。
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昔は犬といえば庭か玄関で飼うものだったが、いつのころからか室内飼いが増え、富士丸を迎えた2002年ころには保護団体から犬を引き取る際は室内飼いが譲渡条件(飼い主さん募集の場合)になっていたほどだった。犬のしつけ方についても、さまざまなことが言われはじめた時期だったように思う。子どものころから犬と暮らしていたとはいえ、大人になってはじめて飼う犬で、しかも大型犬だったため、いろいろなことに悩み、情報を集めようとしたものだ。
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当時頭を悩ませていたのは、散歩中にリードを馬車馬のごとく引っ張ることと、留守中の破壊活動だった。そのころは夜勤の派遣社員をしていたので、暇な時間を見つけてはインターネットで犬のしつけについて調べていた(私的にパソコンを使っちゃいけないんだけど、当時はまだ甘かった)。そして、そこに書かれてあったことを次々に試していった。

出かける前の30分くらいは無視する、帰宅してもしばらくは無視する、叱らない、いけないことをしたら目を合わせない、などなど。結果は、どれもこれといった効果はなかった。疲れて帰ると毎回トイレシートはビリビリに破られているし、散歩に行けばグイグイ引っ張る。そんな富士丸の姿を見ているうちに「もしかしたらこいつは馬鹿で、これは一生治らないのかもしれない」と思ったこともあった。
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それが間違いであることに気がついたのは、富士丸が3才になるころだった。要するに、若い大型犬にしては運動量が足りていなかっただけなのだ。そのうえ、留守番も長かった。そりゃ力も有り余るし、不満もあっただろう。今ではそんなことは常識だが、当時は本当にわからなかった。つまり、馬鹿で無知だったのは自分だったのだ。
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頭でっかちになって調べた情報はほとんど役に立たず(富士丸の場合)、最終的には日々の暮らしの中でなんとなく自分で感じてはじめてわかったことだった。意思疎通ができているつもりで、実際は一方通行だったのだ。そのころから比べると、格段に情報は増えている。が、結局のところすべての犬に対して「こうすればいい」という方法など存在しないのではないかと思ったりする。

富士丸の経験から、大吉は中型犬だがたくさん運動させてやったほうがいいだろうと思ったが、本人は別にそうでもないらしい。思い切り走れるようにと広い河川敷のある地域に引っ越したが(それだけが理由でもない)、最初こそ喜んだものの、今では「ただの散歩に行くところ」と認識しているのか走り回ることもほとんどない。というように、犬によっても全然違う。
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ほかにも10年くらい前にドッグトレーナーが推奨していたしつけ方も今では全然違ってきているし、動物行動学の学者がいろいろなことを発表しているが、最終的には「自分と犬」の関係で、そこに問題がないと感じるのなら別にいいんじゃないかと思う(他人に迷惑をかけない範囲で)。「飼い主たる者、こうあらねば!」という自分の理想を持つのは自由だが、力まなくていいし、人の言う通りにする必要もないだろうと。個人的には厳しくするのも軍隊みたいで楽しくないし、かといって絶対に叱らず誉めまくるのもなんか違うような気がする。
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これまでもそうだったように世間の常識なんてものはコロコロ変わるし、これからも変わるだろう。だから少なくとも今の常識をそのまま信用したり、今自分が考えていることが100%正しいとは思わないようにしている。基本は半分聞き流す、くらいのスタンスがいいのではないかと。そんなわけで、もし犬のことで悩んでいる人がいたら、少し気楽に考えたほうがいいですよ。ただし、この話も話半分くらいで。
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