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至福のときは犬によって違う?【穴澤賢の犬のはなし】

Vol.42 至福のときは犬によって違う?

犬と暮らしている人はわかると思うが、犬にもしっかり表情があり、うれしいときはうれしそうな顔をするし、つまらないときはそういう顔になり、怒られたりするとこの世の終わりみたいな顔をする。しっぽも感情に直結しているので、表情としっぽを見ていれば「あぁ、今は楽しくて仕方ないんだな」とわかるし、そういうときはこちらまでうれしくなるものだ。では犬は、どのようなときにうれしさマックスの状態になるのだろう。

富士丸は、とにかく自然の多いところが好きだった。山や川、海などに行くと目の色が変わり、どこかのスイッチが入るようだった。終始ニカニカしていて、うれしさを全身で表すかのごとく飛び跳ねるように走り回っていた。だから、そういうところへたくさん遊びに行った。
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それから、雪も大好きだった。都内に珍しく雪が積もった日などは、雪をむさぼり食い、雪の上でごろごろしたあげく、気持ちよさそうに目を細めていた。ハスキーの血が入っている毛皮は、雪の上でも平気だったんだろう。そういう姿を見慣れていたせいもあり、「犬とはそういうものなんだ」と思っていた。

しかし、どうやら大吉はそうではないらしい。子犬から成長して体ができあがってきたころ、そろそろいいかと思い、旅行に連れて行った。宿の施設のドッグランではそれなりに楽しそうではあったが、足を伸ばして渓流に行くと、全然楽しそうではなかった。「何ここ、なんかゴツゴツしてて歩きにくいんだけど。水の音うるさいし」というような感じで困惑している。そのときは、まぁ最初だから仕方ないと思っていた。ふだんは近所の遊歩道くらいしか歩いてないのに、突然山の中の川に来たのだから、そりゃ戸惑うだろうと。
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が、その後何度か川へ遊びに行っても、楽しそうにしている様子はない。家で「これから遊びに行くぞ」と声をかけると、「やったー!」という表情になってテンションがマックスになるのだが、そこが頂点で、いざ到着すると「別に」という顔になる。なんなら早く帰りたいんですけど、みたいな感じでとても自然を満喫しているようには見えない。ちょっとはしゃいだと思っても、すぐに飽きる。雪が積もっても、特別うれしそうなわけでもない。そのうち変わるのかと思っていたが、どうやら大吉は、アウトドアも雪もそんなに好きではないらしい。そんな犬がいるのか、と驚いてしまう。
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では大吉にとって最も楽しい瞬間はなんだろうかと観察していたが、もしかしたら家の中でおもちゃの引っ張り合いをしているときが一番楽しそうかもしれない。それこそ目の色を変えて、こっちが止めないと飽きることなく全力でおもちゃを引っ張っている。
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あと大吉がテンションマックスになることが、もうひとつあった。それは大吉の名付け親でもある「丸ちゃん大好きNさん(富士丸のことが大好きな穴澤の友人Nさん)」に会ったときだ。Nさんに会うと、ちぎれんばかりにしっぽをブンブンと振り、体をくねらせながら全身で喜びを表現する。Nさんも大吉がかわいくて仕方ないので、相思相愛といった感じでずっと遊んでいる。
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以上のことから憶測すると、大吉にとって最高にうれしい瞬間とは「Nさんと家でおもちゃの引っ張り合いをしているとき」という答えが導き出される。別にジェラシーを感じるとかそういうのではないが、もっとワイルドになれよこの軟弱野郎、と思う。
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