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最近読んで、ためになった犬の本【穴澤賢の犬のはなし】

Vol.24 最近読んで、ためになった犬の本

少し前に『保健所犬の飼い主になる前に知っておきたいこと(新潮社)』という本が出版された。著者の片野ゆかさんは、これまでにも熊本市動物愛護センターの10年間の活動を追った『ゼロ! こぎゃんかわいか動物がなぜ死なねばならんと?(集英社)』など、犬関連の書籍を多く書いている方で、現在は動物愛護団体から引き取った愛犬マドと暮らしている。
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共通の知り合いから紹介されたのがきっかけで、マドごと我が家に招いて何度か宴会をしたことがあるが、犬に対する考え方は自分と近い人だなと勝手に思っている。犬猫の殺処分問題について、悲壮感たっぷりに語ることもなければ、ヒステリックに叫ぶこともない。そのかわり、きちんと綿密な取材をして事実を伝えるというスタンスで、その部分は怠け者の自分にはマネのできないことだとも思っている。
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片野ゆかさんの愛犬マド

そんな片野さんが10年以上に渡って全国の保健所や動物愛護センター、民間の動物愛護団体、個人ボランティアなどを取材してきた中で「では実際に保健所犬の飼い主になるにはどうしたらいいの?」というのをまとめたものが本書だ。保健所犬と、そこに関わる人々のことについて書かれた本はたくさんあるが、引き取る側の立場に立って語られた本は意外となかったかもしれない。
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新しい飼い主さんを募集しているくらいだから「うちで飼いたい!」と手を挙げれば、簡単に「はいどうぞ」と飼い主になれると思っている人もいるかもしれないが、実は、保健所犬を引き取るのはそんなに簡単ではない。ちなみに、ここでいう保健所犬とは、一度は人間に見捨てられ、社会から不要といわれた犬のことで、実際に保健所には入っていなくても、民間団体に保護されたり、不妊・去勢しなかったために生まれた子犬も含まれる。
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そういう意味では、生まれてすぐに個人ボランティアによって飼い主募集サイトに出されていた大吉も保健所犬になるが、実際にアンケートやお見合いなど、我が家に来るまでいつくかのステップがあった(ここで「予想外の展開」になったわけだが)。そのステップはだいたい同じだが、譲渡基準はそれぞれの団体で微妙に違ったりする。
厳しいところだと、一人暮らしだというだけで断られるし、若干ゆるいところだとある一定基準をクリアすればOKだったりする。犬と猫でも違う。本には団体の固有名詞までは出していないが、だいたいどのような基準があるのか、最低条件として何をクリアしていないといけないのかといったことが細かく書かれているので、これから保健所犬の飼い主になりたいと思っている人にはとても参考になると思う。
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そのほかにも、犬一頭に生涯かかるおおよその金額など、現実的なことも書かれている。お金の話なんてと思うかもしれないが、犬を飼ううえで、経済面というのは非常に重要な要素のひとつになってくるのは事実。食べる物や消耗品に加え、高齢になってくると医療費もかかってくる。本書ではそのあたりも片野さんの先代犬を例にあげて、どれくらいかかったのかということが書かれている。個体差はあるし、あくまでも目安でしかないが、知っておいて損はないと思う。
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さらに、東日本大震災が起きたあとには現地を取材して、どうすれば災害時に飼い主と犬が離ればなれにならなくて済むのか、避難方法やふだんからの備えなども書かれているので、現在犬と暮らしている人にとってもかなりためになる本だと思う。

そして本の最後の章では、マドを引き取ったときのことも書かれている。実際にマドに会ったことがあるが、若干ビビリな性格ではあるものの、攻撃性もなく非常にいいこで美人犬だった。がざつな大吉は、迷惑がられていたが。

今でこそ、大吉が年をとったときにできることはなんでもしてやりたいと、医療費の70%を保険会社が負担してくれる保険に入ったりしているが、富士丸をもらったときには医療費はおろか、犬と暮らすうえで知っておくべきことを何もわかっていなかった。一緒に暮らしていく中で、経済面も含め、こんなに大変なのかと思ったことは多々ある。それでも楽しかった思い出のほうが圧倒的に多いけれど。
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この本では、飼う前に知っておくべきことを踏まえたうえで、最終的に犬との出会いは「かわいい!」と思うかどうか、運命的なものを感じるかどうかだと結んでいる。そして犬を迎えた人は、不幸な犬を救ってあげたのではなく、犬が来てくれたことで自分が救われたという声が圧倒的に多いという。個人的にも、まったくその通りだと思う。
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