身勝手な犬【穴澤賢の犬のはなし】

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身勝手な犬

別に甘やかしているつもりはないが、大吉を見ていると「こいつ、ホントに自分勝手だなぁ」と思うことがある。たとえば……。

大吉は花火の音が苦手だ。今暮らしている神奈川県の腰越という街は海が近いので、暖かくなってくると夜な夜な若者がやってきて砂浜で打ち上げ花火をあげる。その「パンッ」という音が聞こえるなり、ブルブル震えだし、挙動不審になる。

これを書いているのは5月の終わりだが、週末になると花火の音が聞こえてくる。大吉があまりに嫌がるので、私まで花火の音に敏感になってしまい、外から花火の音が聞こえると慌てて窓を閉めるのが習慣になってしまっている。

せっかく夜風が気持ちいい季節なのに、ろくに窓も開けていられないこのもどかしさ。地元住民からしたら迷惑な話だが、若者らの花火ではしゃぎたい気持ちもわからなくはない。そもそも、花火の音をそんなに恐れる意味がわからない。

とはいえ、いくらなんでも深夜に花火をやるのは止めて欲しい。信じられないかもしれないが、夜中の2時や、ひどいときは明け方に花火をしている奴らがいるのだ。ここまでくると、さすがに腹が立つ。さっきも述べたとおり、こちとら大吉のせいで花火の音には人一倍敏感になっているのである。

寝ていても、花火の音で目が覚めてしまう。「もう、こんな時間に！」と思いつつ、「大吉は大丈夫か？」と見ると、なんと、寝ているのである。今まさにパンパンという音が聞こえているのに、爆睡してピクリともしない。「お前を心配して起きたのに！」と思いつつ、いつの間にかまた眠る。

しばらくすると、また花火の音で目が覚める。で、ほとんど習慣で「大吉は？」と見ると、やっぱり爆睡しているのである。眠いときは、花火も全然気にならないらしい。なんなんだそれは。こっちはお前が心配で、花火の音が聞こえる度にいちいち目が覚めてしまうようになったのに、自分はのん気に眠っているという。なんて自分勝手な奴なんだろう。