Vol.19 うろたえる飼い主は男が多い?
先日、仕事で関西の大きな動物病院の院長と会った際、興味深い話を耳にした。犬(や猫)が、ご飯を食べなくなったり、ふだんとどこか様子が違ったりしたときにうろたえるのは、圧倒的に男性が多いというのだ。
犬が多少食べなくたって、女性は「お腹がすいたらそのうち食べるわよ」とどっしり構えているのに対し、男性は「こいつが食べないなんて絶対おかしい病院で診てもらったほうがいいよ」となり、診察したところ「ま、なんでもないですね」となることが多いらしい。そうなのか。しかし思い当たるフシはある。たしかに大吉が食べないと不安になったしペット栄養コンサルタントの奈良先生にもこの連載で相談をした。ちょっとしたことにも過剰に反応してしまう。
実は、この話を聞く2週間ほど前にこんなことがあった。ある日、大吉の右後ろ足のくるぶしあたり、ごく一部の毛が薄くなっていることに気がついた。大きさにして5ミリほどだろうか。少し地肌が見えていた。そのときはちょっと擦りむいたくらいだと、あまり気に止めなかった。が、翌日じっくり見てみると、何やら地肌が赤くなっている。昨日見たときはそんなことなかったのに、どうしたのだろう……。
とたんに心配になって、その周囲の毛をかき分けて地肌を覗いてみると、足首あたりが全体的に赤くなっている。でも、腫れたりしこりがあるわけではない。触っても嫌がらないし、大吉は気にしている様子もない。でも、絶対おかしい。左足首と見比べてみても、地肌の色が明らかに違うのだ。あいにく日曜の夕方だったため、かかりつけの動物病院も休診日だし、インターネットでいろいろ調べてみることにした。
調べてみると「全体的に赤いのは●●の疑いがある」とか「どす黒いのは●●かもしれない」などと書いてあるが、はっきりとしたことはよくわからない。どんどん不安が広がっていく。もしかしたら、ガンかもしれない…。そんなわけはないよ、と打ち消そうとするが、その根拠がない。しこりはないけれど、まだごく初期なのかもしれない。どうしよう。とにかく、翌朝一番で動物病院に連れて行くことにして、その夜は眠った。
そして翌日、動物病院に連れて行ったところ「なんでもないですね。ただの虫さされか、かぶれたか、そんなところでしょう」と診断され、ホッと胸をなでおろす。恥ずかしまぎれに「皮膚ガンかと思いました」と獣医に伝えると「こんなに若い犬が皮膚ガンになることは、まずないですよ」と言われる。そうなのね。でも、よかった。
それからしばらくして、今度は右太ももに軽い炎症が出たときは(湿気の多い季節はよくあることらしい。それとも大吉が軟弱なのか)さすがにビビらなかったが、我ながらこの情けないほどのうろたえぶりはなんだろうと思う。ふだん、ほかのことにはそんなに心配性ではないはずなのに。たしかに、うろたえるのは男が多いのかもしれない。というか、その典型ではないか俺。