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7年が過ぎて【穴澤賢の犬のはなし】

7年が過ぎて

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今年も10月1日を迎えた。記録の意味でも今の心境を書いておこうかと思う。

毎年10月1日になると、「そうか、あの日から○年か」と考えてしまうようになった。別に感傷的になっているわけではない。ただ、あまりにも衝撃的であり、私にとっては大袈裟ではなく世界がひっくり返るような出来事だったあの日から、何年が経過したのか、つい振り返ってしまうのだ。
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今でも小説などでパラレルワールド的な話が出て来ると、あの日のことを思い出す。ドアを開けた瞬間に、まるで別世界に迷い込んでしまったかのようだった。昼まで元気だった富士丸が横たわっていることも、いくらゆすっても起きないことも、目にしていることすべてに実感がなかった。「なんなんだこれは」と思うだけだった。あの奇妙な感覚だけは、今でもはっきり覚えている。
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ふと、去年は何を書いていたのだろうと過去の記事を読み返してみたが、今年もさほど心境としては変わっていない。5年目くらいまでは、悲しみが和らいで行くと同時に、少しずつ彼の輪郭がぼやけていくような感覚はあったが、ここ最近はほとんど変化がないように思える。つらい、悲しい、というネガティブな要素が削ぎ落とされて、かわいかった、いいやつだった、という思いだけが残っているような気がする。
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「今でも思い出して涙が出ること、ある?」と少し前に親しい友人から聞かれた。「どうだろう、さすがにないかな」と答えた。「でもよく涙枯れるまで、なんて言葉があるけどあれは嘘だね、いくら泣いても枯れなかったもん」と付け加えたが、今こうして泣くこともなくなったということは、枯れたのだろうか。よくわからない。
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仕事部屋には彼の写真が飾ってあり、毎日見ているのだが、今でも愛おしくてたまらない。できることなら夢でも会いたい(触れたい)といまだに思うが、なぜか彼は出てこない。まぁ、それでもいい。それでもいいけど、たまには出てこいよ、と思う。
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それが7年経った今の心境だろうか。きっと、みんな同じなんだろうなと思う。いっしょに暮らした愛おしい存在が亡くなった後も、ずっと忘れず好きなままだということがわかった。
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