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犬のこと猫のこと 人の復興支援からペットの支援へ

  • vol.1

東日本大震災で被災した犬猫たちの保護活動を中心に、アニマルシェルターやファームを運営しているJASAという団体があります。JASAとは一般社団法人 日本動物支援協会のこと。宮城県仙台市を拠点として活動をしています。震災時の犬猫のこと、JASAを起ち上げた思い、これからの活動などについて取材しました。

文・構成/いしぐろゆきこ

人の復興支援からペットの支援へ

8月のある日、JASAの代表・我妻敬司さんにお会いして話を伺いました。JASAが発足をしたのは、2012年1月のこと。それより以前は、我妻さんが運営に関わる『有限会社dogwood 』の「わんにゃん災害支援」による被災動物の保護活動を行っていたそう。

「JASAのような団体を起ち上げるのはかなりの覚悟と勇気がいると思いますが……」私(いしぐろ)がそう切り出すと、我妻さんは「はい、そうですね。ちょっと考えたたけでもどんなに大変なことか想像ができます。実は、数年前に自分の生きてきた道のりを振り返ったことがあるんです。そうしたら、進路などの岐路にたったとき、自分はいつも楽なほうばかりを選択してきたなぁと。それを後悔しているわけではないのですが、今度は大変そうな道のりを進もうと決めたんです」。そう話す我妻さんの表情にはキリリとした決意のようなものが滲む。

JASAの代表を務める我妻敬司さん

我妻さんは、子どものころから犬や猫と親しみながら育った。この団体を起ち上げようと決めたきっかけは、我妻さんの奥さまが仙台郊外で「ドックウッド」というペットショップを経営していたことから。「以前から、犬や猫などペットを飼うことに対して、誤った知識や古くからの言い伝えのようなことを真に受けている人が多いなって思っていました。それによって結局不幸になるのは動物たちで……。そこをなんとかしたかった」と我妻さん。その活動の準備をしていたときに、東日本大震災は起こりました。

東日本大震災は、多くのペットにも悲しい体験となりました。JASA発行の写真集「2011.3.11-6.30 活動の記録」より

「震災があった日の午前中、私はあるイベントに参加をしていて宮城県の海沿いにいました。イベントの時間が午後だったら…どうなっていたかわかりません。幸い、家は山沿いにあるので、揺れましたが津波の被害には遭わずに済みました。停電はしばらく続きましたが、わりと日常に近い暮らしができていました」。

「なるほど、それで被災した犬猫を保護しようと活動をはじめたのですね」そう尋ねてみたが、どうもそうでもないらしい。震災直後、我妻さんの家の被害は甚大には至らなかった。しかしお店を再開できるような状況ではなかった。

活動を支援してくれた方々が集めた、ペット用物資の数々

「とにかく、まずは被災地に物資を運ぼうと思いました。家にストックしてあったものや手に入るものを集めて避難所を廻るようになったんです。当時、避難していたみなさんが一番ほしがっていたのは段ボールでした。段ボールを立てて自分たちのスペースを確保しプライバシーを守ったり、暖をとったりできるので。あとはガソリンを集めるために新潟へ何度も通いました。そんな中で、避難されている人たちが自分の家で飼っていたペットを心配する声を聞くようになったんです」。

もともと動物のこととなると放っておけない性分。被災者のペット相談に応じたり、飼い主と離ればなれになってしまった動物を保護してお世話をすることは、我妻さんにとってごく自然のことだった。この活動が地元の新聞・河北新報に報道され、被災者からも信頼を寄せられるようになり、現在に至る。お店のスタッフが犬猫の専門家だったことも功を奏していた。

これから必要になる啓蒙の活動

JASAの活動は、被災地から保護した犬や猫たちが暮らすシェルターとファームの運営。ボランティアが中心となり動物たちの世話、犬や猫の飼い主や譲渡会の会場を探すのも大きな仕事だ。現在、シェルターで暮らす犬猫は約87頭(2013年7月現在)。ちょっと想像しただけでも気が遠くなるような数だが、一時期よりは減少しているそう。ファームではポニーやアルパカ、うさぎ、ミニブタなど、動物とのふれあい体験なども行っている。

JASA運営のファームにて開催されている、ふれあい体験の様子

取材の途中、我妻さんはこんなことを言った「震災後、預かった犬たちの中には、フィラリアに罹ってる犬がたくさんいたんです」。「えっ……」一瞬耳を疑い、私は驚いたが、我妻さんは続ける「フィラリアは100%予防できる病気ですが、飼い主はその予防もしていない。狂犬病の予防接種も受けていない犬もいました。そんな飼い方では、犬も人も幸せにはなれないのではないでしょうか。犬を飼うのであれば、義務づけられていることはしてほしいし、社会のルールを守る最低限のしつけもするべき。こういった啓蒙もJASAでやっていきたいことです」

震災直後の、救援活動の様子。JASA発行の写真集「2011.3.11-6.30 活動の記録」より

最後に、自ら震災に遭い、多くの被災者、被災動物に接してきた我妻さんに、同伴避難について聞いてみた。
「フードや水を準備しておくことも大切ですが、避難に備えてやるべきことは犬のしつけです。まずは“ケージやキャリーケースにおとなしく入っていられるか”“無駄吠えしないか”が大事。犬猫避難袋の準備はその次ですね」。

そしてそれはJASAの今後の展望にもつながる。「東日本大震災で学んだことや得た経験を、次に何か起こってしまったときのために活かしたい。そのために今から自分たちのできることをやっていきます。本を出版したり、ボランティアを広く募集しているのもそんな意味があるからです」。

JASAで制作をした本の数々

JASAで作成をした本は、学校の教材として取りあげられることもあるそう。被災動物保護活動以外にも社会教育として牧場での体験会、ボランティアリーダーの育成事業など、JASAが取り組む未来に向けての活動は始まったばかりだ。

団体紹介

JASA:一般社団法人 日本動物支援協会

所在地:〒989-3212 宮城県仙台市青葉区芋沢字綱木坂25
TEL:022-394-9860 FAX:022-394-9860
HP:http://jasa311.jp/

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人の復興支援からペットの支援へ コラム いぬ /inunekonokoto/g6n2u9000000lqda-img/g6n2u9000000lqen.jpg 1 動物を保護してお世話をすることは、自然のこと
東日本大震災で被災した犬猫たちの保護活動を中心に、アニマルシェルターやファームを運営しているJASAという団体があります。JASAとは一般社団法人 日本動物支援協会のこと。宮城県仙台市を拠点として活動をしています。震災時の犬猫のこと、JASAを起ち上げた思い、これからの活動などについて取材しました。文・構成/いしぐろゆきこ人の復興支援からペットの支援へ8月のある日、JASAの代表・我妻敬司さんにお g6n2u9000000lqda
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