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Vol.8 犬が年を取るとき、飼い主さんが考えること「 愛犬のすこやかアンチエイジング」

Vol.8 犬が年を取るとき、飼い主さんが考えること

元気な長生き犬を目指してスタートした8才になる柴犬センパイのアンチエイジング。
今回はシニア犬の飼い主さんのもとを訪れました。シニア犬の飼い主が、ふだんの生活で気をつけていること、病気に対する心構えなどをお聞きします。

12才のジャック・ラッセル・テリア、ニコに会いに行く

10年以上も前のこと、知人の家にジャック・ラッセル・テリアのハッスルという犬がいた。その名の通りおてんばで、賢くてかわいらしい瞳、コンパクトで筋肉質な体つき……。そのころ、ジャック・ラッセル・テリアは日本ではまだ珍しい犬種だったと思う。

ハッスルは若き母となり、6頭の子犬を産んだ。その中の1頭が今回会いに行ったニコ。ニコは、現在は葉山で料理や焼き菓子を作り、料理教室やイベントなどを行うスペース「昵懇(jiccon)」を主宰する大西麻子さんと暮らしている。
ニコは、私にとっても産まれたときから知っている親しい犬。知人の家から友人の家へと住処を替えて、現在、12才。
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12才になるジャック・ラッセル・テリア、ニコ

いっこ、にこ、さんこ、よんこ……ハッスルの子犬たちは、産まれた順番に名前を付けられた。ニコは2番目に産まれたからニコ。もう1頭の妹と母犬・ハッスルの元に残され暮らしていたが、事情により5才のときに、大西さんのもとに迎えられた。

「ニコちゃん、もう12才ですが“年をとったなぁ”なんて思うこと、ありますか?」
そう尋ねると「うーん、ニコはテンションが高い犬なので、暮らしの中で年齢を感じることはないですねぇ。ただ以前の写真を見返すと、わぁ、今のニコと違うなぁ〜って思います」と大西さん。そうそう、そうなんですよねぇ。犬って飼い主が気づかないうちに年齢を重ねている、私も最近実感しています。

「毛ヅヤとか顔全体のピカピカ感が違うんですよね」大西さんはおっしゃいますが、「現在のニコちゃんもとても12才とは思えない若々しさですよ」と私。大西さんは「えぇ、まぁ美白は自慢なんです(笑)」。こちらのイヌとヒト、なかなか愉快なコンビです。
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ニコの飼い主さんでお話を伺った大西麻子さん

5才で大西さんの元に来てからはときどきおなかの調子を崩すくらいで健康自慢のニコだったのに、ある日突然、獣医師さんから「心臓を調べたところ、心音に雑音が聞こえます」と宣告を受けた。今から3年前、ニコが9才のときのこと。
「おなかの薬をもらいに行ったときだったと思うのですが、突然告げられて、えー!って。“心臓病の進行状態を6段階に分けるとレベル2”だというんです。なのにその治療法については何も言われなかった。そこで、別の病院でもう一度診てもらいました」。

別の病院で検査を受けても、やっぱりニコは心臓がおもわしくなかった。獣医師さんが処方してくれた薬を1日1錠飲むことになり、現在、心臓の薬は1日2錠に増えてる。そこに、最近は胆じゅうの薬も加わり、ニコは1日3錠の薬を飲んでいる。
「薬を嫌がることはありませんか?」の問いに、大西さんは「それがぜんぜん嫌がらないんです。食べるものも飲むものも薬も、今までに嫌がったことが1度もないんですよ」。ニコ、あっぱれ。それはたいそう親孝行なことですよ!
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大きくなってから、トレーニングを受けるということ

そういう訳で、現在12才になったニコは薬を飲みながらの生活。定期的に病院に検診に行き薬を処方してもらう生活も3年目となった。いっしょに過ごしていても、心臓病を抱えているなんて思えないほど、いきいきと元気なニコ。一病息災で暮らすために、大西さんはほかに何か工夫していることがあるのだろうか、そう思って聞いてみた。
「去年、トレーナーさんについてトレーニングしたんですよ。そのことが、もうほんとうに日々の暮らしが180度変わった、っていうくらい、ニコにとっても私にとってもよかったことでした」そう話す大西さん。
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「“心臓が悪い”ということは、あまり興奮させてはいけないなぁ、と思っていたんです。でもニコは、ほかの犬が苦手で会うとケンカをするし、家でピンポ〜ンと鳴るたびにワンワン吠える。1日に何度も戦闘体勢に入る犬でした。それって心臓に負担ですよね。だから、散歩中にほかの犬と会ったらどうしたらいいのか、ピンポ〜ンってチャイムが鳴ったらどうしたらいいのか、教えていただき訓練しました」。
トレーナーさんの分析によると、ニコは究極の怖がり。外部で何か起きたときに怖くて怖くてどうしていいかわからずにパニックになるそう。パニックになって我を忘れてやみくもに吠えたり、何かに噛みつこうとして暴れる。やられる前にやっちゃえ、みたいな感じ……? それと、飼い主を頼りにしていなかったらしい(笑)。だから今まで「この人は頼りにならないから、あたしがなんとかしなくちゃ!」とがんばっていた、と。
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そこで、何か起きたら“どうしたらいい?”って、飼い主の指示を待つようにトレーニングをした。大西さんはニコがパニックになりそうなことを察知したら、ニコのスイッチが入る前に指示を出せるように心がけたそう。散歩中に向こうから知らない犬が来たらニコに「見なくていいからね」って声をかけて、道の隅で犬が通りすぎるのを待つ。こういったコミュニケーションを繰り返していくうちに、ニコも「なにかあったら、おかあさん(大西さんのこと)の言うことを聞けばいいんだな」ということを理解した。ここでやっと今までの責任をおろしたニコ。「最近は表情もおっとりとして顔つきも変わってきました」と大西さん。
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「ニコに対する困りごとが前は10だとしたら今は0.5くらい。トレーニングをして、劇的に変化がありました。前は基本はいいこだけど、突発的なことが起こるとどうなるかわからない、という不安もありました。“しつけは子犬のうちに”ということもよく耳にするし、11才でトレーニングって効果があるのかなと思っていたけれど、犬って何才からでも変われるんですね。これは自分で体験して実感したことだから、声を大にして言えることです。だからニコは、そのことを教えてくれた恩人でもあります。いいトレーナーさんに出会えたこともラッキーでした」そう話す大西さんのちょっと後ろにニコがいる。「お母さん、あたしのことを話しているの?」私たちの話し声を聞きながら「なんだか眠たくなってきちゃった〜」と、あくびをひとつ。12才にしてのんき犬を満喫中のニコ。
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これまで7年近く、東京・世田谷区でカフェを運営していた大西さん。最近、神奈川県の葉山に拠点を移すため、実家のある逗子に引っ越しをした。丘の上にある家から海までの散歩、浜辺でずぶ濡れになって波と遊んだり、ニコにとっても楽しい毎日。
「前のお店もニコのおかげで、という部分が多かったのですが、今度もニコと一緒にやっていきたいです。せめてあと3年くらいは(笑)」。
いえいえ大西さん、3年といわず、ニコといつまでも……!
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次回予告
センパイの食生活から、シニア犬の食事を考えます
取材•文:いしぐろゆきこ

プロフィール
いしぐろゆきこ:愛犬誌や女性誌、WEBなどで日々の暮らし、犬猫に関するエッセイやモノのリコメンドを執筆。近著に『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』(幻冬舎)。
http://www.blueorange.co.jp/yuruyuru/
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